これまでの物語

プロセスワークは1970年代に生まれました。スイスのチューリヒにあるユング研究所の分析家だったアーノルド・ミンデルが、言葉とイメージを重視するユング心理学の原理を身体にも応用し、夢と身体症状に共通のパターンがあることを見出したことが始まりです。

実践を繰り返して効果を確信したミンデルは、自身の手法を「ドリームボディワークDreambody Work」と名づけ、1982年に最初の本を上梓しました。その後、共通のパターンは夢と身体だけでなく、人間関係やグループのダイナミクスにも見出せることに気づき、対象を個人からカップル、家族、グループや組織、コミュニティや国際紛争にまで拡大し、名前を「プロセス指向心理学(POP: Process Oriented Psychology」と言い換えます。さらには心理学の枠組みを越えた学際的アプローチとして「プロセスワークProcess Work」と呼ぶに至りました。

現在は、ミンデルの本拠地北米オレゴン州ポートランドのプロセスワーク研究所をはじめ、世界各地にトレーニングセンターが広がっています。

創始者アーノルド・ミンデル

ミンデルはもともと、1940年にニューヨークのブロンクスで、ユダヤ人移民の2世として生まれました。彼の両親は東ヨーロッパからの移民で、祖母は英語をうまく話さず、彼を「アヌーシュカ」と呼んだそうです。やがて小学校に入ると、行き帰りにイタリア人コミュニティの子どもたちにいじめられる体験をします。もちろんケンカもうまくなったそうですが、殴られながらも「この子たちと仲良くなる方法はないのだろうか」と考えていたといいます。このような幼少期が、彼がのちに差別や経済格差など世界に普遍的な課題を扱うワールドワークを始めた背景になっていきます。

その後ミンデルはマサチューセッツ工科大学で物理学を専攻し、数学者のリチャード・ファインマンなどに教えを受けつつ、量子力学や、おそらく当時台頭してきていたシステム思考になじんだものと思われます。さらにチューリヒの大学院で物理学を学びますが、その一年間でユング心理学に魅せられ、ユング研究所に入ります。そこでユングの高弟L.フォン・フランツから、数学や科学と心理学を結びつけることを生涯のテーマとして与えられました。そして一対一でクライアントに、時にはその家族にも向き合うユング派の心理療法の分析家として20年の経験を積む中で、心身のつながりや、昏睡状態のクライアントにも独自の意識がありコミュニケーションが取れることなどを見出していきます。ドリームボディワークを発表してからは、それを学びに集まる若者が増え、チューリヒにプロセス指向心理学研究所を立ち上げました。

1990年ごろに大きな転回点が訪れます。ミンデルは「地球が自分のクライアントだ」という夢を見て、グループワークを実践し始めたのです。また拠点をチューリヒから自然豊かなオレゴン州ポートランドに移します。グループワークはその後、世界の普遍的な問題を扱う「ワールドワーク」という手法に発展し、2,3年に一度のペースで数十か国から数百人を集めて開催するセミナーとなりました。

ミンデルは今も、2,3年に一冊のペースで新著を刊行し、新たな概念を打ち出し続けています。その著書は数十か国語に訳され、プロセスワークのトレーニングセンターも世界各地で増え続けています。当センターもその一翼を担っています。2007年には国際プロセス指向心理学協会(International Association of Process Oriented Psychology: IAPOP)が設立され、3年に一回ほどのペースで国際カンファレンスが開催されるようになりました。2016年5月には、日本での開催が予定されています。