ディープ・デモクラシーとエルダーシップ

この、すべてを自分ごととして共感できるあり方を、プロセスワークでは「エルダーシップ」と呼んでいます。長老のように、長い人生のうちに様々な立場や思いを体験し、どんな人のどんな思いにも「自分にもそんな時があった」と自分ごととして共感し、対立がある場合にはその双方をともに慈しむことができる意識状態です。

そんなこと、とても凡人の私には無理、と思われるかもしれません。でも、長い人生の中で一瞬、いや何回かは、誰でもそんな思いになったことがあるでしょう。私たちはみんな、可能性としてはエルダーシップの種を自分のうちに持っており、そこへのアクセスを止める何かがあるだけだとプロセスワークは考えます。

それを実践に落とし込むためにプロセスワークが大切にしている態度が、「深層民主主義」です。漢字で書くとこむずかしいですが、シンプルに言えば「深い民主主義」。「今日は深い話ができたね」という時のような、感情や感覚、思い、ビジョンなどいわゆる「現実的」でない意識状態も、大切にしていく態度です。

通常の民主主義が、集団にとって重要な問題(富や権力の再分配などいわゆる「現実的」な問題)について誰かが極端な不利益をこうむらないよう利害関係者が話し合いでものごとを進めるものだとしたら、深層民主主義は、それ以前の、人々の行動やものごとなど目に見える形をつくりだす大元の感情や思いを含めなければ有効な変化は創り出せないと考えます。

しかしそれには、多様な、多くの場合相反する立場を大きく包含する土台が必要です。激しく対立する双方の言い分を共感を持って聞き、より深い共通の目標を見出せるように導くファシリテーターが必要です。だからこそプロセスワークは、エルダーシップが重要だと考えています。

そしてそれは、誰か優れたリーダーがやってくれればいいというものではありません。自分の中の小さな葛藤やパートナーとのケンカから地球規模の戦争まで、このパターンは共通です。だからこそプロセスワークは、そのそれぞれのレベルで問題をゆたかな解決に変えていくために、私たちの一人一人が内なるエルダーシップを育てることが重要だと考えています。それこそが、この世界をよりよい場所に変える鍵だと考え、その実践的な方法を試行錯誤のうちに積み上げてきたのです。